車に使うコンパウンドとは?要注意の失敗例や正しい使用方法を紹介
カー用品店などで見かけるコンパウンドは、車を磨いたり傷を消したりするときに使われるアイテムです。車を使用していると、ボディに細かい傷が付くのは珍しくないため、「細かな傷は自分で直したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、コンパウンドの主な役割と使い方を解説します。コンパウンドの種類や使い方を知ることで、セルフでできる傷直しの幅が広がるでしょう。
※目次※
・コンパウンドは傷付いた部分を研磨して目立たなくするアイテム。傷を直すわけではないので注意しよう。
・コンパウンドは主にリキッドタイプとペーストタイプがあり、他にも目の粗さなどの違いがある。
・研磨をやりすぎるとボディカラー層を削ってしまうなど、注意点を押さえておくことが大切。
車に使うコンパウンドとは?
カー用品店などでコンパウンドという商品を見たことがある方もいるでしょう。コンパウンドは車の傷を目立たなくするアイテムですが、どのような特徴があるのでしょうか。
まずは、コンパウンドの用途や傷が目立たなくなる仕組みなど、基礎知識を押さえておきましょう。
コンパウンドはボディ表面の傷を目立たなくする研磨剤
コンパウンド(compound)は混合物を意味します。車においてコンパウンドは、ボディなどのパーツの表面を磨くための研磨剤です。
コンパウンドでボディを磨くと表面がならされ、浅い傷を目立たなくする効果があります。液状(リキッド)タイプとペーストタイプがあり、目の粗さなどの違いを含め種類が豊富で、さまざまな商品から購入可能です。
コンパウンドでボディを研磨するときは、布やスポンジを使用して手で磨く方法や、バフに付けてポリッシャーと呼ばれる機械で磨く方法があります。
コンパウンドで対応できる傷
ボディに塗られる塗料は、ボディカラーだけではありません。コンパウンドでボディの傷を目立たなくするためには、まず塗装の構造を把握することが大切です。塗装は基本的に3層で構成されており、最初に塗布されるのが下地層で、その上にカラー層を塗ります。
そして艶を出すために最終仕上げとして塗布されるのが、透明のクリア層です。コンパウンドで目立たなくなるのはクリア層の細かな傷であり、磨きすぎるとカラー層を傷付けてしまうことから、しっかりと見極めて作業する必要があります。
コンパウンドは初心者でも使いやすい
コンパウンドは特別な道具が必要ないことから、手順を守れば初心者でも比較的簡単に傷を目立たなくできることが魅力です。
業者へ修理に出したくても経済的に難しいこともあるでしょう。また、コスト面だけでなく、自分のタイミングで気軽に作業できることは大きなメリットといえます。業者に出向いたり、代車を借りたりする手間を省けるのもうれしいポイントです。
車のコンパウンドを使う前に知っておきたい失敗例
コンパウンドは初心者でも傷を目立たなくできることが長所ですが、場合によっては失敗することもあります。
作業する前に、研磨しても傷が隠せない、コンパウンドがボディ以外の箇所に付着するなど、失敗の原因になり得る要素を把握しておきましょう。失敗例とその原因を理解することで、スムーズな作業につながります。
コンパウンドを使っても傷が隠せない!
コンパウンドは研磨することで傷を目立たなくするため、浅い傷のケアに効果的です。傷の深さや状態を把握して使用しましょう。以下はコンパウンドの効果が期待できる傷の特徴です。
・ぬれていると見えなくなる傷
・金属の下地が露出していない軽度の傷
・他の色が付着した傷
深い傷や広範囲の傷はコンパウンドでは対応できません。へこみ傷も専用の機材を使って板金する必要があります。コンパウンドで対処できるのは、軽く研磨して目立たなくなる程度の傷と覚えておきましょう。
コンパウンドの種類が分からない!
ひと口にコンパウンドといっても、カー用品店にはさまざまな種類のコンパウンドが販売されています。車や傷の状態に適したものを選ぶことが重要です。
粒子の違いや液状のタイプなど、選ぶ基準は多くあるといえるでしょう。リサーチ不足で購入すると、研磨しても効果が薄かったり逆に車を傷付けたりしてしまうことも考えられます。コンパウンドの種類やタイプを事前に把握し、車や傷に合ったものを購入しましょう。
車に合うコンパウンドの選び方
コンパウンドにはさまざまな種類があり、車の状態に合ったものを選ぶことが重要です。コンパウンド選びの基準は、主に「目の粗さ」「タイプ(液状もしくはペースト)」「種類(水溶性もしくは油溶性)」「ボディカラー」の4つが挙げられます。
店舗に行って多くの種類のコンパウンドを前に悩むことがないように、事前に知識を得ておきましょう。
コンパウンドの目の粗さで選ぶ
コンパウンドは紙やすりと同じく目の粗さに種類があり、数字が大きくなるほど粒子が細かくなります。目の粗さの分類と用途は以下の通りです。
・中目
比較的粒子が粗い種類です。荒れた塗装面の肌落としや深めの傷消し作業などに用いられます。広範囲の傷を整えるのにも使われますが、磨き方によっては傷を付けてしまう場合もあるでしょう。
・細目
中目よりも目が細かく、浅い傷や中目で研磨した後の調整に用いられます。水アカやさびの除去にも向いている種類です。
・極細目・超微粒子
細目の後にさらに細かく調整するのに用います。中目や細目の研磨で付いた傷を消す効果も期待できます。
・艶出し
細かな粒子で、研磨の仕上げに艶出しとして使うことが多い種類です。
コンパウンドは基本的に、粗めから細めの順に使用していきます。そのため、粒子の異なるコンパウンドがセットになった商品を購入するのもひとつの方法です。
コンパウンドのタイプで選ぶ
コンパウンドのタイプは、液状もしくはペーストに分けられます。それぞれのメリットとデメリットについては、以下をご覧ください。
タイプ |
メリット |
デメリット |
液状 |
・塗り広げやすい ・磨きのムラが出にくい ・種類が豊富 |
・すぐに乾いてしまう ・周囲に飛び散りやすい |
ペースト |
・周囲に飛び散りにくい ・流れ落ちにくい |
・塗り広げにくい ・ムラになりやすい |
液状タイプは、粘度が低いため塗り広げやすくムラになりにくいため、広範囲の研磨に適している点が特徴です。ただし、塗り広げるほど乾燥しやすので、手際よく作業する必要があります。
ペーストタイプは粘土が高いため、塗布しても流れ落ちにくく側面や斜めになっている部分に効果的です。ただし、均一に塗るのが難しい点はデメリットといえます。
コンパウンドの種類で選ぶ
コンパウンドには液状やペーストなどのタイプに分かれているだけでなく、水溶性と油溶性の違いがあります。それぞれのメリットとデメリットは、以下で確認してください。
種類 |
メリット |
デメリット |
水溶性 |
・研磨力に優れている ・効率的に磨ける |
・カスが生じやすい ・磨き残しが目立つ |
油溶性 |
・塗装を傷つけにくい ・垂れにくく扱いやすい |
・研磨力が高くはない ・コンパウンドが残りやすい |
ボディの傷をしっかりと研磨したい場合は、水溶性が向いているでしょう。研磨力があるため、効率的に磨けるのが特徴です。ただし、カスが残りやすく磨き残しに注意しましょう。
油溶性は、水溶性より研磨力が弱いため、塗装の磨きすぎになりにくいといえます。また、垂れにくいため扱いやすさがメリットです。一方で、コンパウンドが残ってしまう可能性があるので、しっかりと落としましょう。
車のボディカラーで選ぶ
車の塗装はカラーによって成分が異なります。できるだけ塗装を落とさずきれいに保ちたいときは、カラーによって粒子の粗さを使い分けることも選び方のひとつといえるでしょう。以下は車の色と適した粒子サイズの一例です。
・超微粒子:薄い色の車に向いている 例)ホワイト・シルバー・ベージュなど
・濃色超微粒子:濃い色の車に向いている 例)ブラック・ダークグリーン・レッドなど
コンパウンドで修復できる傷と修復できない傷の見分け方
コンパウンドを使用して傷を修復できるかどうかは、事前に見分けられる可能性があります。修復できない傷をコンパウンドで磨くと、悪化させてしまうこともあるため、その場合はプロへ依頼したほうがよいでしょう。
ここでは、コンパウンドで補修可能な傷の見分け方のポイントを解説します。
修復できる傷
コンパウンドで修復できるのはクリア層の傷です。クリア層の傷かどうかを判断する方法として、傷を爪でなぞる方法があります。傷付けない程度に爪でなぞり、引っかかりを感じない場合は、コンパウンドで目立たなくできる可能性が高いでしょう。
ドアハンドルの周囲に付いたすり傷などが、コンパウンドで消せる傷の一例です。ぜひ試してみてください。
修復できない傷
クリア層よりも奥にあるカラー層や下地層まで傷付いている場合は、コンパウンドでの補修を避けたほうが無難です。
例えば、ボディカラーと異なる色が見えている場合は、下地層まで達しているでしょう。このような深い傷を補修するには、専門的な知識と高い技術力が必要となります。
安易にコンパウンドで磨いてしまうと、損傷を拡大させる可能性があり、業者に依頼したときの修理費用が高くなるかもしれません。
車のコンパウンドを使用する際の注意点
車のボディにコンパウンドを使用する場合は、事前に注意点を確認しておきましょう。傷だけでなく、その周囲のパーツに悪影響を及ぼす可能性があるためです。
また、コンパウンドでの補修に向いていない塗装が施されているかもしれません。ここでは、3つの注意点について詳しくチェックしていきましょう。
樹脂素材に付着すると変質する恐れがある
車の外装には、塗装されていない樹脂パーツが備わっている場合もあります。樹脂部分にコンパウンドが付着すると、変質につながる可能性があるため注意が必要です。
樹脂パーツ付近のボディの傷をコンパウンドで磨く場合は、しっかりとマスキングテープなどで保護しておきましょう。隙間まできれいに保護すると、より安心して作業できます。
特殊な塗装を施している車には使用しない
自動車の塗装は、各メーカーがこだわっている部分でもあります。そのため、一般的な塗装とは異なる塗料を使用しているケースに注意が必要です。洗車などで付くことが多い、浅く細かな傷が自然に復元する塗装などが例として挙げられるでしょう。
このような特別な塗装にコンパウンドを使用すると、はがれてしまうかもしれません。特別な塗装の傷は、プロに依頼することが大切です。
日の当たらない場所で作業する
コンパウンドで傷を補修する場合は、気温や天候などの環境にも注意する必要があります。
塗装は高温になると柔らかくなるため、日の当たらない場所で作業するようにしましょう。柔らかくなった状態の塗装にコンパウンドを使用すると、必要以上に磨いてしまうか可能性もあります。
屋根付きの作業場が確保できない場合は、くもりの日を選んで作業することをおすすめします。
車のコンパウンドの適切な使い方
コンパウンドでボディに付いた傷を目立たなくするためには、正しい手順を押さえておく必要があります。
準備や段取りを飛ばしてしまうと、車の傷を増やして「やらないほうがマシだった……」と後悔することになりかねません。ここからは、コンパウンドの具体的な使用方法を7つの手順に分けて解説します。
Step1:コンパウンドと道具を準備する
スムーズに作業を進めるためにも、最初に必要な道具をそろえておきましょう。
・コンパウンド
・スポンジ
・クロスなどの柔らかい布
・マスキングテープ
・洗車道具一式
・ワックス
スポンジはセルロース系やPVAファームなどの、柔らかく保湿性の高い素材のものがコンパウンドと好相性です。また、スポンジは使用するコンパウンドの種類の数に合わせて複数用意しましょう。
Step2:マスキングテープでパーツを保護する
ボディ以外にコンパウンドが付着しないように、傷周辺をマスキングテープで保護します。樹脂製パーツなどにマスキングテープを貼り付けましょう。
事前に貼り付ける場所を洗って、ほこりや油を落としておきます。マスキングテープは粘着力が弱くはがしやすいのが特徴です。貼った箇所を指でなぞってしっかり密着させましょう。この作業を怠ると、テープと車の間にコンパウンドが入り込むことがあります。
Step3:洗車&残った鉄粉を落とす
傷消し作業に入る前に、洗車して汚れを落としておきましょう。一見きれいに見えても、ほこりや砂などが付着していることがあります。洗車せずに磨き作業すると、付着した汚れも一緒にボディをすってしまい、作業前よりも傷が増えてしまうケースも考えられます。
また、ボディにはブレーキの際に発生する鉄粉も付着しています。酸化して固着すると洗車だけではなかなか取れません。トラップ粘土や鉄粉除去剤で取り除きましょう。
Step4:コンパウンドでボディを磨く
スポンジを十分に水に浸して柔らかくしてから、水が出なくなるまで絞ります。コンパウンドは目が細かいものから順に試しましょう。
傷の程度によって研磨できていなければ、段階的に粗くします。スポンジにつけるコンパウンドの量は、リキッドタイプは500円玉サイズ、ペーストタイプの場合は1cm程度が目安です。
磨くときはスポンジを直線的に動かすことを意識しましょう。円を描くように動かすと傷やムラの原因になることがあります。傷部分だけでなく、傷の周囲も磨いて違和感がないように表面をなじませるのがポイントです。
Step5:クロスで拭いてコンパウンドを落とす
適した種類のコンパウンドでひと通り磨いた後は、付着したコンパウンドをクロスで拭き取ります。コンパウンドの種類を替えた場合、前のコンパウンドの粒子が残っていると傷の原因になります。種類を替えるたびにしっかりと拭き取りましょう。
拭き取るときは、傷の様子を確認しながらスポンジと同様にクロスをまっすぐ動かすのがポイントです。まだ傷が目立つようであれば再び磨き作業に戻ります。
Step6:コンパウンドの種類を替えて再び磨く
作業が進み、仕上げの段階に近づくにつれて目が細かいものに替えましょう。徐々に目を細かくしていくことで、自然に表面を整えられます。コンパウンドの種類を替えるときはスポンジも替えることを忘れないようにしましょう。
「コンパウンドで磨いて拭き取る→コンパウンドの目を細かくして磨く」のサイクルを繰り返して、傷が目立たないように表面を整えていきます。傷が見えなくなったら艶出し用のコンパウンドで仕上げましょう。
なお、ここで紹介した、傷の程度にかかわらず「極細→細目→中目」と、細かな目から徐々に種類を替えて磨くことを「リバース研磨」といいます。
Step7:ワックスでコーティングして仕上げ
磨き作業後は、ワックスをかけて補修面のコーティング処理を施しましょう。コンパウンドで磨いた後は塗装の保護層が薄くなり、塗装がはがれやすい繊細な状態です。ワックスやコーティング剤が削れた部分に対する保護層の役割を果たします。
コーティング処理をしなければ磨いた部分がむき出しの状態になるため、空気や水分で化学反応を起こしやすくなります。なお、コーティング処理は数か月で効果がなくなるため、定期的なメンテナンスを心掛けましょう。
車のコンパウンドで落ちない傷の対処法
コンパウンドでは消えない傷や汚れが付いた場合、別の対処方法を考える必要があるでしょう。傷は放置するとさびの原因になり、被害箇所が拡大します。
傷を広げないためにも、早急に対処することが重要です。ここからは、コンパウンドで対応できない傷への対処方法について紹介します。
深い傷は業者に修理を依頼する
コンパウンドで目立たなくできるのは線傷などの軽い傷に限られます。へこみ傷や擦り傷といった、自分で修理できない傷が付いたときは、業者に修理を依頼するのが一般的です。依頼先の候補はディーラー、自動車修理工場、カー用品店などがあります。
業者に依頼すれば専用の機材を使ったプロの修理を受けられ、きれいな仕上がりが期待できます。傷が付いた部分は塗装の内側にさびが進行していることもありますが、プロに任せればこのような目に付きにくい部分も見落とすことなく対処してもらえるでしょう。
コンパウンドのやりすぎにも注意する
コンパウンドを使用しても傷が消えないからといって、何度も研磨するのは避けましょう。コンパウンドはボディの「クリア」という保護層を削っているため、やりすぎるとボディカラーも削ってしまう恐れがあります。経年劣化などでクリア層がはがれている車は特に注意が必要です。自分で消せない傷が付いたときは、無理をせずにプロに任せましょう。
ボディコーティングで傷を防ぐ
傷をきれいに補修できた場合は、ボディコーティングを施工して、ボディの保護を検討してみてはいかがでしょうか。ボディコーティングを施すことで水分や汚れが付着しにくくなり、日ごろの洗車が楽になる点が特徴です。また、ウォータースポットも付きにくくなるでしょう。
さらに、ガラスコーティングなどの硬いコーティング剤を施工した場合は、細かな傷がつきにくくなります。ボディコーティングは、車の美観をより維持しやすくなるのでおすすめです。
まとめ
コンパウンドはカー用品店などで販売されている研磨剤です。傷部分を研磨して表面を整えることで傷を目立たなくする効果があります。初心者でも使用できる手軽さが魅力といえるでしょう。
ただし、コンパウンドで消せるのは軽い傷であることが基本です。深い傷がある場合や、しっかりときれいに直したい場合は、業者への依頼を検討しましょう。
コンパウンドで傷消しの処理をした後は、ボディコーティングを施すことも大切です。塗装を保護して美観を保てるよう、定期的にメンテナンスを実施しましょう。
▼ライタープロフィール
小波津健吾
高山自動車短期大学を卒業とともに国家2級整備士資格を取得。その後、整備士として実務経験を積み重ね自動車検査員資格を取り、民間工場で検査員として従事した経歴を持つ。現在はメカニックや検査員の知識と経験を活かし、主に車系のメディアで執筆している。
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