事故車の修理の見積もりを高くしてもらうのはアリ?買い替えがおすすめのケースは?
自動車業界における事故車とは「事故を起こした車」ではなく、車の骨格に損傷を負い、修復や交換をした履歴がある車を指します。
車同士の事故は大きな被害を生みやすく、修理が必要になれば金銭的な負担も大きくなる傾向です。できる限り多くの保険金を受け取るため、修理費用の見積もりを高くしてもらうのに問題がないのか知りたい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、事故車の修理費用の見積もりに関する情報を紹介します。金額操作の可不可や修理費用の算出方法、修理前にチェックしておきたいポイントも紹介しますので、適切に対応するためにも理解を深めておきましょう。
※目次※
4.事故車の修理の見積もりは幾ら?破損箇所によって分かる目安
・事故車の修理費用は、水増し請求すると詐欺罪に処される可能性がある。
・事故車の修理費用は修理会社と保険会社のアジャスターが協議して確定する。
・修理費用が高額になる場合や車のフレームが損傷している場合などは、修理ではなく買い替えも検討しよう。
事故車の見積もりを高くしてもらう行為は犯罪になる
事故で車の修理費用が必要になった場合、加害者側に損害賠償を請求できます。しかし、修理代が車の時価より高い場合は全額請求できないため、修理代の見積もりを高くしてほしいと考える方もいるでしょう。
しかし、修理費用の見積もりを高くしてもらうのは犯罪になる可能性があります。ここでは、見積もり額を高くしてもらうことのリスクを見ていきましょう。
故意に行った場合は犯罪が成立する
車の修理費用を高くしてもらう場合、正当な理由がなく増額することを「水増し請求」と呼びます。水増し請求は、悪質な事案であり重大な犯罪です。
悪質な事案には、事故による損傷と関係ない部分の修理費や事故の傷を故意に広げた修理費の加算、修理工場に頼んで見積書を改ざんすることなどが当てはまります。
これは「詐欺罪」と「共同正犯」に該当するため、10年以下の懲役です。すでに保険金を受け取った場合は「業務上横領罪」にも当てはまる可能性があります。
示談による解決が難しくなる
交通事故が起きた場合、多くの場合が示談で解決します。示談とは、双方の過失や損害賠償について納得のいく話し合いをし、和解することです。
しかし、修理費用の水増し請求が発覚した場合は相手方が示談を拒否する可能性が高く、解決が難しくなります。示談ができない場合には調停や訴訟に発展するため、解決までに時間がかかるでしょう。
示談が可能でも、水増し請求の調査には時間がかかります。賠償金の交付が遅れるデメリットもあるでしょう。
賠償額の相場を把握しておこう
交通事故で受け取れる車両損害の賠償額は、分損か全損かによって変わります。分損とは、車両の修理費用が車の時価と買い替え諸費用の合計額を下回る場合です。この場合は、修理費用の全額を賠償額として受け取れます。
例:修理費用20万円 時価(100万円)+同条件の中古車に買い替えたときの費用50万円 受け取れる賠償額は20万円 |
一方、全損は物理的に修理できない状態、もしくは修理費用が時価を上回る場合を指します。受け取れる賠償額は修理費用ではなく、時価と買い替え諸費用の合計額です。
例:修理費用150万円 時価(90万円)+同条件の中古車に買い替えたときの費用40万円 受け取れる賠償額は130万円 |
事故車の修理の見積もりの際は事故の状況が重要
事故車を修理する際の見積もりは、通常の中古車買取査定のように車種や年式などの簡単な項目だけでは算出できません。車の傷やへこみはもちろん、何が原因なのかも重要です。
物損事故だけでも複数の原因に分けられるため、修理したい車の事故状況を把握しておきましょう。ここでは、見積もりを依頼する際に知っておきたい事故の種類を解説します。
物損
物損事故は、言葉の通り「物」が壊れた際の分類です。車に小さなへこみができた場合や車が横転して破損した場合など、幅広い程度の事故が含まれます。共通しているのは、人への被害がない点です。
「物」の対象も幅広く、加害者の場合は破損の程度によっては高額請求されるケースも少なくありません。
例えば、事業用車と事故を起こして修理が必要になった場合、修理期間中の仕事に影響が出る可能性もあります。相手の収入に直結する問題のため、修理期間に見込まれる売上金額の支払いを請求されるでしょう。
単独事故でガードレールを破損した場合も、物損事故として扱われます。「誰も見ていないから」と通報せずに通り過ぎるのは法律違反です。人的な被害がなくても、保険会社や警察などに連絡しましょう。
もらい事故
自分によそ見や誤操作などの過失がなく、相手側の原因による事故は「もらい事故」です。停車中の車をぶつけられたり、信号を待っているときに追突されたりするケースが当てはまります。
もらい事故では被害者となり、物損があった場合でも責任を問われることはありません。車の修理が必要であれば、全額を相手側に請求できます。むち打ちなどのけがを負った場合は、保険適用のために医師の診断書が必要です。
保険金を受け取るタイミングは、相手側が加入している保険内容により異なります。修理後に領収書などをそろえて請求するケースもあることから、一時的に金銭的な負担を負う可能性も少なくありません。
修理費用として請求したお金の使い方は自由です。修理をせず、車の買い替え費用に充てても問題ありません。
追突事故
追突は2台以上の車がぶつかるため、互いに被害を負う可能性が高くなります。多くの場合は信号待ちや一時停止中など、前後の車での追突です。ぶつかった衝撃で車が破損するケースも多く、早急に修理する必要があります。
事故直後は、落ち着いて警察に連絡しましょう。相手の状況も把握し、安全に対処することが大切です。追突事故では車両保険が適用されるため、自分に責任がある場合でも、対物保険で相手側の修理費用を賄えます。
また、追突の衝撃が強い場合は、打撲やむち打ちのようなけがを負っている可能性も考慮しなければなりません。相手側のけがには搭乗者保険・人身傷害保険が適用されるため、トラブルがないよう話を進めましょう。
事故車の修理費用が算出される手順
事故車の修理費用が適正かどうかを判断するには、どのような流れで修理費用が確定するのかを把握しておく必要があります。
誰がどのようにして損害を確認・調査し、修理費用を協議するのかを知っていれば、万が一事故の加害者になった場合でも安心して任せられるでしょう。ここでは、事故車の修理費用が算出される手順を紹介します。
修理費用が確定されるまでの流れ
事故が起きた後から修理費用が確定されるまでの大まかな流れは、以下の通りです。
1.被害者が被害車両を修理工場へ入庫
2.修理工場が加害者側の保険会社へ入庫を連絡
3.修理工場が修理費用の見積もりを作成し、保険会社に送付
4.保険会社の専門家(アジャスター)が見積もり内容を調査・確認
5.修理工場と保険会社が修理費用について協議し、金額を確定
修理工場へ車両を入庫する際、自走できない車両の場合はレッカーを手配します。この場合は、レッカー代を受け取れるケースもあるため、明細を残しておきましょう。アジャスターは直接車両を確認し、状態をチェックすることもあります。
修理費用は全額支払われるものではない
車両の修理費用は、修理工場とアジャスターの協議によって正確に算出されます。しかし、確定した修理費用が全額支払われるとは限りません。もらい事故ではなくこちらにも過失がある場合は、過失割合によって賠償金額が減額されます。
全損の場合は修理費用が支払われません。全損は、修理ができない場合や車の時価と買い替え諸費用の合計額よりも修理費用が高い場合です。そのため、修理費用ではなく買い替え費用として賠償金が支払われます。
相手が任意保険に加入していない場合
加害者側が任意保険に加入していない場合は、保険金の請求ができません。相手から修理費用を受け取るためには、損害賠償請求が必要です。
また、自分の車両保険を利用し、修理費用を賄う方法もあります。しかし、車両保険を使用すると保険の等級が下がることから、今後の保険料の増額は免れません。増額分は加害者に請求できないため、できるだけ自分の保険は使わないようにしましょう。
損害賠償を請求する場合や、立て替えた修理費用を支払ってもらいたい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
事故車の修理の見積もりは幾ら?破損箇所によって分かる目安
事故に遭った車の修理費用は、破損箇所や破損具合、修理方法によって異なります。修理にかかる期間も違うため、見積金額の目安と修理期間の目安は把握しておきましょう。
ここでは、フレーム・バンパー・ドアが損傷したときの見積もりと修理期間の目安に加え、どのような修理方法があるのかを紹介します。
フレームの損傷
フレームは車の基礎となる骨組みのため、少しのゆがみや損傷でも修理が必要です。フレームの周囲にあるパーツを解体したり組み立てしたりする必要もあることから、約100万円の修理費用がかかります。修理期間は1週間~1か月程度です。
また、フレームを修理した車は「修復歴車」と呼ばれます。修復歴車は、中古車買取店での査定が減額されたり買取ってもらえなかったりするため、修理費用の高額さとリセールバリューの低下を考慮して買い替えを検討してもよいでしょう。
バンパーの損傷
バンパーの修理費用は、損傷の程度だけではなくフロントかリアかによっても変わります。一般的な修理費用は、以下の通りです。
|
修理費用の目安 |
交換費用の目安 |
フロントバンパー |
約3万円~6万円 |
約5万円~8万円 |
リアバンパー |
約5万円~7万円 |
約8万円~10万円 |
バンパーの損傷が傷やゆがみ、へこみ程度であれば修理が可能です。バンパーが割れて修理できない場合は、交換する必要があります。
また、リアバンパーのほうが費用は高額です。修理期間は、フロントバンパーで2日間、リアバンパーの場合は4日間を見ておきましょう。
ドアの損傷
ドアの損傷は、傷の大きさによって費用が大きく変わります。10cm以下の傷やへこみであれば、約1万円~5万円で修理が可能です。
しかし、ドアが大きくへこんでしまった場合は、交換が必要になる可能性もあります。交換になると国産車で10万円以上、輸入車で30万円以上の費用が必要です。
また、小さな傷であれば数時間で修理できますが、ドアの交換になると1週間以上かかります。輸入車の場合はパーツの輸送が必要になるため、さらに長くなるでしょう。
板金加工・部品交換?部分塗装・全塗装?で問題になるケースも
事故車の修理にかかる費用は、修理方法によっても変わります。そのため、どの程度の修理が必要なのか、被害者側と加害者側で意見が分かれるケースもあります。
問題になりやすい修理方法は、損傷部分をハンマーでたたいてへこみを修復する「板金加工」と、損傷部分を取り換える「部品交換」です。部品交換よりも板金加工のほうが安く済むため、板金加工で修理できないものだけが部品交換になります。
また、修復箇所を「部分塗装」にするか「全塗装」にするかも問題になりやすい部分です。修理工場とアジャスター、もしくは弁護士に相談し、修理方法を決めましょう。
事故車の修理をする際にチェックしておきたいポイント
交通事故に遭って車の修理が必要になった場合、見積もり依頼や代車の手配など、やらなくてはならない手続きが数多あります。
突然のことで焦ってしまい、何をどうしたらよいのか分からなくなる方もいるでしょう。ここでは、修理する際に確認しておきたいポイントを紹介します。
見積もりを取る時期
事故が起きた後は、できるだけ早く修理工場に入庫しましょう。見積もりを取るのが遅れると、車の損傷が事故によるものなのか分かりづらくなります。
物損事故の時効は3年です。時効までに見積もりを依頼するのはもちろん、大きな損傷ではないからと自走を続けてしまうと、補償されなくなる可能性も出てきます。
入庫した修理工場での見積もりに納得できないときは、他の修理工場へ持っていくのもおすすめです。しかし、移動や入庫に時間がかかるため、最初に持っていく修理工場は慎重に選びましょう。
修理にかかる日数
破損の度合いや修理工場のパーツの在庫状況などにより、修理期間が長くなる可能性があります。修理にどのくらいの日数がかかるのか、業者に共有してもらいましょう。
多くの場合、事故車は保険を利用して修理します。保険会社と業者間での協定により、修理開始まで日数を要する場合もあるでしょう。
保険会社の規定にのっとって修理するため「どのパーツをどのような方法で修理する」などの細かい契約が必要です。修理自体の日数だけでなく、依頼から修理完了までの期間を考慮しましょう。
業者とのコミュニケーション
修理を依頼する業者としっかりコミュニケーションを取ることも大切です。見積もりを依頼するときは、物損事故なのか、もらい事故なのかなどを説明しましょう。事故の種類が分かれば、どのように破損したのかや他に修理する部分はないかを考えやすくなります。
見積もりに関する疑問点や見積書に不明点がある場合は、安心して修理を任せられるようにしっかり確認しましょう。見積金額に納得がいかない場合は、複数の業者で見積もりを取り、比較するのもおすすめです。
修理とは別の費用
車の修理を依頼した際、修理費用とは別の費用がかかる場合もあります。例えば、パーツの修理や交換で車内清掃が必要になった場合の清掃費用、修理時に使用したボルトやグリスなどの費用です。これらは、保険の適用外になる可能性があります。
また、修理期間中にレンタカーや代車を利用する場合も別途費用が必要です。ディーラーでは代車を用意してくれることが大半ですが、民間の修理工場では代車に限りがあることから、レンタカーを借りなければなりません。
レンタカーの費用は保険会社に請求できますが、借りられる期間が決まっているため、修理期間が長いと自己負担になるでしょう。
事故車を修理しなくても保険金はもらえる
修理費用の見積もりを保険会社に提出すれば、車を修理しない場合でも保険金の受け取りが可能です。受け取った保険金の使い道は決められていないため、新しい車の購入費にも充てられます。
車の買い替えを検討していたのであれば、修理するよりも購入費用の足しにするほうがよいでしょう。
しかし、修理しない場合でも修理見積書は提出する必要があります。修理しない場合は、見積もりだけ取ってほしいことを修理工場に伝えましょう。
事故車の修理の見積もりが高い場合は買い替えも検討しよう
事故で損傷した車は、修理ではなく買い替える方法もあります。買い替えに向いているのは修理費用が高額になる場合や、補償額で修理費用を補えない場合です。
買い替えを検討したい車の状態や、買い替えを検討したほうがよい場合を紹介しますので、修理か買い替えかを見極めましょう。
買い替えを検討したい車の状態とは
買い替えを検討したい場合の判断基準は、車の年式と走行距離、骨格部分に損傷があるかです。
年式が古い車は、燃費性能が低い、車検費用が高いなどのデメリットがあります。走行距離の長い車も、パーツの劣化で数年以内に修理が必要になる可能性が高いでしょう。そのため、総合的に判断すると買い替えるほうが安く済みます。
また、骨格部分に損傷を負った車は修理すると「修復歴車」になり、故障リスクとリセールバリューの低下が否めません。安心して車に乗るためには、買い替えるのが得策です。
修理費用が100万円を超える場合
車の損傷具合によっては、修理費用が100万円を超えることもあります。特に、エンジンの交換やフレームの修理などは高額になるケースが多い傾向です。修理するか買い替えるかは、100万円をひとつの目安にするとよいでしょう。
中古車であれば、100万円前後で購入できる車両もあります。高額な費用を支払って故障のリスクがある修復歴車に乗り続けるより、修復歴のない新しい車を購入するほうが安全面でも安心です。
修理費用が補償費用を上回る場合
修理費用が高額な場合も含め、補償額で修理費用を補えない場合も買い替えを検討しましょう。特に、もらい事故ではなく双方に過失がある場合は、修理費用が補償額を上回る可能性があります。
修理費用の見積金額にもよりますが、過失割合が5対5であれば保険金で修理費用を補うことは難しくなるでしょう。自己負担額を考慮し、修理か買い替えかの判断が必要です。
まとめ
事故に遭った車の修理費用は、高く見積もってもらえません。水増し請求した場合には犯罪になるため、修理工場と保険会社の協議によって確定した金額に従いましょう。金額に納得がいかない場合は、他の修理工場でも見積もりを取り、比較するのがおすすめです。
また、保険会社から受け取れる保険金で修理費用が補えない場合もあります。修理費用が高額になる場合や車の骨格部分が損傷した場合は、修理ではなく車の買い替えも検討しましょう。
▼ライタープロフィール
中村浩紀 なかむらひろき
クルマ記事に特化したライター
現在4台の車を所有(アルファード・プリウス・レクサスUX・コペン)。クルマ系のメディアでさまざまなジャンルの記事を執筆し、2024年1月までに300記事以上の実績をもっている。
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