中古車売買での瑕疵担保責任を解説!トラブル回避のポイントや請求期限も紹介
中古車を購入する際、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。「走行距離が実際より少なく表示されていた」「購入後すぐに重大な故障が見つかった」など、売主の説明と実際の車の状態が異なるケースは少なくありません。
このような問題は、法律上「瑕疵担保責任」に関わる問題だと考えられます。しかし、瑕疵担保責任について、正しく理解している人は多くないのが実情です。売主と買主、双方が責任と義務を正しく理解することが、トラブルを未然に防ぐ鍵となるでしょう。
※目次※
2.中古車売買時の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の事例と売主が負う責任
3.【売主側】中古車売買における瑕疵担保責任(契約不適合責任)への対策
4.【買主側】中古車売買における瑕疵担保責任(契約不適合責任)への対策
5.中古車売買での瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する相談窓口
・瑕疵担保責任(契約不適合責任)は、車に欠陥があった場合に売主が負う責任のこと。
・瑕疵担保責任(契約不適合責任)で売主は損害賠償請求のリスクが、買主は契約不履行による損害を被るリスクがある。
・買主側は欠陥把握から1年以内に通知の上、5年以内に権利を行使する必要がある。
中古車売買における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは
まずは、瑕疵担保責任の意味や、民法改正による変更点などを紹介します。また、瑕疵担保責任の対象となる欠陥についても知っておきましょう。
中古車売買でのトラブルをできるだけ回避するためにも、瑕疵担保責任について理解を深めることは欠かせません。
瑕疵担保責任は売却した車に欠陥があった際に発生する責任
瑕疵担保責任とは、売買契約において売主が買主に対して負う責任のことです。買主を保護する目的を持ち、売主が売却した車(商品)に隠れた欠陥があった場合に適用されます。
もし欠陥が見つかれば、たとえ売主が故意で隠していなくても、責任を問われることになるでしょう。
瑕疵担保責任は、中古車の売買でよく問題になるトラブルのひとつです。売主も買主も、瑕疵担保責任についてしっかりと理解しておく必要があります。
瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に改正された
民法改正により、2020年4月から瑕疵担保責任は「契約不適合責任」へ変更されています。
瑕疵担保責任は、売却した車(商品)に「隠れた欠陥」があった場合に売主が責任を負うというものでした。一方、改正後の契約不適合責任では、売主は売却した車(商品)が「契約の内容に適合している」ことを保証する義務を負います。
つまり、売主が欠陥に気付いていたかどうかに関係なく、車(商品)に契約内容にはなかった欠陥・問題があったなら、責任が発生するということです。瑕疵担保責任のときには「隠れた欠陥」という曖昧だった売主の責任領域が、民法改正でより明確化されたといえるでしょう。
また、改正後の大きなポイントとして、買主側の救済手段の選択肢が増えたことも挙げられます。それまでは「契約の解除」「損害賠償請求」しかできなかった一方で、改正後は「代金減額請求権」「追完請求権」もできるようになりました。
なお、実務上の対応にはあまり大きな違いはないと考えられています。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)の対象となる欠陥
売主が故意に隠していた欠陥はいうまでもなく、気付いていなかった欠陥であっても、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の対象となります。
例えば、中古車の売買で、売主が気付いていなかったエンジンの不具合などが後から見つかった場合、売主は責任を負うことになるでしょう。
また、欠陥ではないものの、契約の内容に適合していないために「契約不適合責任」になる場合もあります。例えば、2WD車だと思って購入したのに、実際に乗ってみたら4WD車だったケースです。
他にも、運転支援機能付きと書かれていたのに壊れていたケースなど、欠陥・契約内容不適合となるものはさまざまにあります。
中古車売買時の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の事例と売主が負う責任
中古車の瑕疵担保責任(契約不適合責任)を巡るトラブルは、少なくありません。購入後に重大な欠陥が見つかっても、売主が責任を認めないケースもあるでしょう。
ここでは、実際の裁判で見られた瑕疵担保責任(契約不適合責任)の事例を紹介します。売主が負う賠償責任を知っておけば、中古車の欠陥がいかに重大な結果を招くか理解できるでしょう。
中古車売買における実際の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の事例
中古車売買において、瑕疵担保責任(契約不適合責任)が問われるトラブル事例は多くあります。例えば、購入後に重大な欠陥が見つかったにもかかわらず、売主が責任を認めない場合などです。
また、実際の裁判例としては、メーターの巻き戻しによる実際の走行距離の隠蔽があった事例や、申告のあった不良箇所以外にも多数欠陥があった事例などで、売主の瑕疵担保責任(契約不適合責任)が認められたケースがあります。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)は、売主が故意に欠陥を隠していなくても適用されるので覚えておきましょう。
(出典:『H20.06.10大阪地裁判決|消費者契約法判例集 〈判決日順〉|近江法律事務所』)
(出典:『ネットオークションにおける出品者の瑕疵担保責任と「ノークレーム・ノーリターン」特約』)
瑕疵担保責任(契約不適合責任)で中古車の売主が負う責任
欠陥のある車を売却した売主は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負うことになります。売主が故意で欠陥を隠していたわけではなくても、責任は免れません。
売却した中古車に欠陥があった場合、売主は以下の責任を負う可能性があります。(民法 第562条〜第564条)
・契約解除
・損害賠償請求
・代金減額請求
・追完請求
売主は、中古車の状態を正確に開示し、買主に伝えることが最低限の義務といえるでしょう。万が一欠陥が見つかった場合は、誠実に対応する必要があります。売却前にはしっかりと車の状態を確認し、必要な修理を行っておくことが大切です。
(出典:『民法 第562条、第563条、第564条 | e-Gov法令検索』)
【売主側】中古車売買における瑕疵担保責任(契約不適合責任)への対策
中古車を売却する際、売主が瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負うことを理解し、トラブルを未然に防ぐための対応を取ることが重要です。
ここでは、中古車の売主が注意すべきポイントや売買契約書の記載内容について解説します。車の売却を検討している人は、ぜひ参考にしましょう。
車両の状態を入念に確認して瑕疵担保責任(契約不適合責任)を回避/h3>
売主が瑕疵担保責任(契約不適合責任)を回避するためには、まず車両の状態を隅々までチェックし、欠陥や不具合を見逃さないことが大切です。
傷やへこみ、足回り・エンジン回り・走行距離・付属品など、チェック項目は多岐にわたります。その後、売買契約書に車両の状態を詳細に記載しましょう。
売主としては、できる限り誠実に情報を開示し、買主とのコミュニケーションを大切にすることが、トラブルを未然に防ぐ最善の方法だといえます。万が一、売却後に欠陥が見つかった場合は誠実に対応し、買主との話し合いを通じて解決を図ることが重要です。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)を回避するための中古車売買契約書への記載内容
売買契約書は、中古車売買におけるトラブルを防ぐ上で非常に重要な役割を果たします。契約書には、車両状況・売買価格・支払い方法・車両と書類の引き渡し日時・保証内容などを明確に記載しましょう。
また、車両の状態について、売主が把握している範囲で正確に記述することが求められます。事故歴や修復歴、欠陥や不具合などがある場合は、隠さずに正直に開示することが重要です。付属品なども詳細に記載し、トラブル防止に努めましょう。
売買契約書を交わすことで、売主と買主の権利と義務が明確になり、万が一トラブルが発生した際にも、契約書を基に解決を図ることが可能です。中古車を売却する際は、売買契約書の作成を怠らないようにしましょう。
【買主側】中古車売買における瑕疵担保責任(契約不適合責任)への対策
中古車を購入する際、買主も事前の十分な確認が欠かせません。ここでは、中古車購入前に確認すべきポイントや、万が一トラブルになった際の対処法について詳しく解説します。
また、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を請求するには、期限が法律で決められている点も押さえておきましょう。瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する知識を身に付け、納得のいく中古車を購入するための手がかりにしてください。
中古車購入前に確認すべきポイントは外観や内装、エンジン周り
中古車を購入する際は、事前に車の状態をしっかりとチェックすることが重要です。まず、車両の外観や内装を入念に確認し、傷や汚れ、故障の兆候がないかを見極めましょう。
走行距離や車検証の内容も確認し、メーター改ざんや事故歴の有無を見抜くことが大切です。さらに試乗も行い、異音・振動などの違和感がないか確かめましょう。エンジンやブレーキ、電装系統などの動作チェックも欠かせません。
さらに、契約書にはしっかりと目を通すことも大事です。少しでも気になること・不明点があれば、売主に確認しましょう。懸念が残る場合は、購入を見送ることも検討します。
可能であれば、査定時・契約時の様子を音声・動画で記録しておくのもおすすめです。後から内容を見直すのに役立つ他、何か問題が起きたときの証拠としても活用できます。なお、音声・動画で記録する際は、売主の許可を得ることも忘れてはいけません。
購入前の入念なチェックが、後々のトラブルを防ぐ鍵となるでしょう。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関するトラブル発生時の対処法
万が一、購入後に欠陥が見つかった場合、慌てず冷静に対処することが肝心です。まずは、欠陥の内容を詳しく記録し、証拠となる写真・動画を撮影しておきましょう。 次に、売主に連絡を取り、欠陥の内容を伝えて補修や代金の返還などを求めます。
しかし、売主が悪質な業者などでなかなか応じてくれない場合もあるかもしれません。そのようなときは、法的な手段を検討する必要があるでしょう。相談窓口や弁護士などに相談し、適切な対処法を探るのもひとつの方法です。
中古車売買時の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の請求期限
中古車を購入した後、隠れた欠陥が見つかった場合、売主に瑕疵担保責任(契約不適合責任)を追及できる期間は限られています。まず、買主は欠陥を知ってから、1年以内に売主に通知をしなければなりません(民法 第566条)。
通知をしたら、5年以内に権利を行使する必要があります。また、車の引き渡しから10年が経過してしまうと、その後欠陥を見つけても権利の行使はできません(民法 第166条)。
購入後に重大な欠陥が見つかったら、すぐに売主へ連絡を取りましょう。売主との話し合いで解決できない場合は、相談窓口へ相談に行くのはもちろん、法的措置を検討するのもひとつの手です。
(出典:『民法 第166条、第566条 | e-Gov法令検索』)
中古車売買での瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する相談窓口
中古車売買時に瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関するトラブルが起こった際には、一人で悩まず専用の相談窓口へ問い合わせましょう。
売主が悪質な業者であれば、なかなか解決せず精神的にも疲弊してしまう恐れもあります。外部へ相談することで、解決の糸口が見えてくることも少なくありません。主な相談窓口には、以下のものがあります。
・国民生活センター
・消費生活相談窓口
・JPUC車売却消費者相談室
・日本中古自動車販売協会連合会
・自動車公正取引協議会
・自動車製造物責任相談センター
・弁護士
・法テラス
国民生活センターや消費生活相談窓口では、商品売買における幅広いトラブルの相談に乗ってもらえます。具体的に相談したい場合は、中古車に特化した機関に相談するのもよいでしょう。
相談窓口へ相談しても解決の糸口が見えてこない場合は、弁護士や法テラスに相談するのがおすすめです。法的措置を検討することで、事態が進展する可能性があるでしょう。
まとめ
円滑な中古車売買のためには、売主と買主の双方が瑕疵担保責任(契約不適合責任)について正しく理解し、コミュニケーションを取ることが何より大切です。
売主は車の状態を隠さず、欠陥があれば正直に伝えましょう。買主は納得いくまで質問し、疑問点を解消することが重要です。
また、売買契約書にはできるだけ詳細に車の状態を記載し、両者で内容を確認することをおすすめします。口約束だけでは、後々トラブルの元になりかねません。書面に残すことで、万が一の際もしっかりと話し合いができます。
お互いに誠実に情報を共有し、納得した上で取引することが、結果的に両者にとってベストな選択になるでしょう。中古車の売買は高額な取引になることも多いので、ひとつひとつ丁寧に進めていくことが肝心です。
▼ライタープロフィール
鈴木祐貴
車と音楽、旅と猫を愛するライター。多様なWebメディアの編集・ディレクション経験を重ね、2018年よりフリーランスとなる。
現在もさまざまなジャンルの編集をする傍ら、車関連のオウンドメディアや車の税金に関するコンテンツなどの編集経験を生かし、ライターとして車の魅力・おもしろさも発信中。
バックパックひとつでふらりと旅に出るのが好きだが、いずれはキャンピングカーで気ままに世界中をロードトリップしようと思っている。
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いかがでしたか。今回の記事が中古車購入を検討しているあなたの参考になれば幸いです。
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