車の暖房が効かないのは故障?対応策や修理費用の目安
自動車に使う暖房は、エンジンの熱を利用して車内に温風を送るシンプルな機構です。家庭用エアコンのように電気で熱源を生み出さなくても、エンジンが動いていれば使えます。
しかし「エンジンは動いているのに暖かくならない」「温風が出てこない」などの経験がある方もいるのではないでしょうか。
この記事では、車の暖房が効かないときの故障例と修理費用の目安を紹介します。暖房の仕組みと効かないときの対処法も解説しますので、故障しないよう定期的にチェックし、冬場のドライブも快適に過ごしましょう。
※目次※
・車の暖房が効かないときは冷却水の漏れや部品の故障を疑い、エンジンルームをチェックして修理店に相談しよう。
・プラグインハイブリッド車や電気自動車は、エンジンではなく電気を使うヒーターで室内を暖める仕組みが採用されている。
・暖房を効率的に使うためには、内気循環やA/Cの調整、さらには窓からの放熱を遮ることがおすすめ。
車の暖房が効かないのは故障?
冬場のドライブに欠かせないのが、車内を暖める暖房です。しかし、いつまでも暖まらない、温風が出てこないなど困った経験がある方もいるのではないでしょうか。
ここでは、車のエンジンを使って車内を暖める詳しい仕組みと、暖房が効かないときに考えられるトラブルを解説します。
自動車の暖房の温かさはエンジンの熱でできている
自動車のエンジンを稼働すると、強い熱が発生します。エンジンの燃焼室は1,000℃を超える熱さです。
この熱を放置すると、オーバーヒートしてエンジンブロックが溶けてしまうため「LLC(ロングライフクーラント)」と呼ばれる冷却水を使い、エンジンを冷やします。
自動車の暖房は、このシステムを利用していることが特徴です。エンジンを冷やすために使う冷却水は、エンジンの熱で一瞬にして100℃前後の熱湯になります。
この熱エネルギーに風を当てることで出る温風が、車の暖房です。自動車の特性を利用して生み出されるため、暖房のためだけに燃料を消費しません。
暖房は冷房とは違ってエアコンガスを使わない
車の暖房は、エンジンの冷却水に風を当てて車内に温風を送り出す簡単な構造です。温度の調整も最小限で済みます。しかし、冷房は風を冷やさなければ冷風を生み出せません。風を冷やすためにはエアコンガスが必要です。
エアコンガスは、コンプレッサーを稼働させて作ります。コンプレッサーによって作られたエアコンガスを使い、風を冷やすのが冷房です。暖房にはエアコンガスを使いません。
また、コンプレッサーを稼働させるためには電気も必要なため、冷房を使う際は電気代が発生します。これも暖房と違う点です。
暖房が効かないときは冷却水の不足や故障が考えられる
車の暖房は、エンジンの熱エネルギーを冷却して温風にする機構です。そのため、暖房が効かない場合は冷却水が不足してエンジンがオーバーヒートしている、送風ファンが故障しているなどの要因が考えられます。
複数の原因があるため、車に詳しくない人が原因を特定するのは困難でしょう。エンジン回りを確認しても分からないときは、近隣のガソリンスタンドや整備工場などでの確認をおすすめします。
車の暖房が効かないときの故障例と修理費用の目安
車の暖房が効かないときは、複数の原因が考えられます。冷却水の不足であれば補充するだけで直りますが、重要な部品が故障している可能性もあるため、修理も視野に入れましょう。
ここでは、暖房が効かないときの故障例と修理にかかる費用の目安を紹介します。
冷却水の水漏れ
「温風が出ない」「変な臭いがする」などの場合は、冷却水が漏れている可能性があります。冷却水が不足しているだけであれば、補充するだけで解決です。
しかし、冷却水は簡単に蒸発するものではないため、極端に減っている場合は水漏れしている恐れがあります。
水漏れの原因として挙げられるのは、ウォーターポンプの故障やラジエーターの損傷、ラジエーターホース・ヒーターホースの劣化などです。修理にかかる費用は、下記を参考にしてください。
ウォーターポンプの交換 |
3万円程度 |
ラジエーターの交換 |
3万円~4万円程度 |
ヒーターホースの交換 |
3万円程度 |
冷却水の交換 |
6,000円程度 |
送風に関わる部品の故障
エンジンの熱を冷却水で冷やす仕組みに問題がない場合は、熱風を送風する部品が故障している可能性があります。
暖房をつけても風が出ていないときは、送風ファンの破損やモーターの故障を疑いましょう。モーターが故障している場合は冷房に変えても風が出ないため、確認することをおすすめします。
送風に関わるヒーターファン(ブロアモーター)の交換には、2万円程度の費用が必要です。
温度の感知に関わる部品の故障
車の暖房は、冷却水の温度を感知する水温センサーや気温を感知する温度センサー、日差しの状態を判断する日射センサーなどで各種温度を把握し、適切な温度の風を送り出しています。
そのため、どれか1つでもセンサーが故障していると車内の温度が計測できず、風が出ません。センサーの交換費用は車種や機種によって異なりますが、水温センサーの場合は5,000円程度で交換が可能です。
温度の調整に関わる部品の故障
暖房が効かない原因で特に多いのが、温度を調整するサーモスタットの故障です。サーモスタットはエンジンの熱と外気を混合し、適切な温度に調節する役割があります。サーモスタットが故障していると、予期せず高温または低温の風が出る不具合が起こるでしょう。
サーモスタットは経年劣化する部品のため、エンジンを稼働させても適温に達しない場合は交換が必要です。サーモスタットの交換には、1万2,000円程度かかります。
ガソリン車とは異なる暖房の仕組みが採用された車もある
車種によっては、エンジンの熱ではなく電気ヒーターで温める暖房を採用しています。これに当てはまるのが、プラグインハイブリッド車や電気自動車です。
エンジンを搭載していない、またはエンジンを停止して電気で走行する車の場合は、エンジンの熱を利用できません。ここでは、エンジンを使わない場合の暖房の仕組みを紹介します。
エンジンを使わない車が登場している
近年、環境問題の観点からさまざまなプラグインハイブリッド車や電気自動車が誕生しています。これらの車が走行に使うのは、ガソリンエンジンではなく電気モーターです。そのため、エンジンの熱を使った暖房システムが使えません。
これらの車種には、エンジンの熱ではなく電気を使って温風を出す機構が採用されているため、ガソリン車とは構造が違うことを理解しておきましょう。
ヒーターが採用されている
プラグインハイブリッド車や電気自動車の暖房として採用されているのが、電気ヒーターです。電気を熱に変える「PTCヒーター」で熱源を確保しています。しかし、暖房を使えば使うほど電気を消費して走行距離が短くなるため、効率は良くありません。
近年採用され始めたのが、ヒートポンプ式ヒーターです。ヒートポンプ式は、室内コンデンサーで大気中の熱を取り込み高温の熱に圧縮し、車内の冷風を当てて温度を調整します。使用電力以上の暖房効果を得られるため、PTCヒーターよりも効率的です。
また、株式会社豊田自動織機と株式会社デンソーは、氷点下における暖房使用時でもEV走行ができる「ガスインジェクション機能付きヒートポンプ暖房」を開発しています。
車の暖房が効かないときはどうする?
エンジンの熱を使う暖房は、エンジンが冷えているときには効果がありません。そのため、エンジンをかけた直後やエンジンを切って停車している場合は、他の手段で車内を暖める必要があります。
窓からの放熱を抑える、暖めグッズを使うなどして、快適に過ごせるように工夫しましょう。ここでは、車のエンジンが効かないときの対処法を紹介します。
断熱効果を高める
車の暖房を効果的に使いたいときは、窓からの放熱を抑制するのがおすすめです。例えば、窓ガラスに貼るフィルムを断熱性の高いものにすることで暖房効果を高められます。
車中泊用の放熱を抑えるサンシェードも最適です。サンシェードを使って窓からの放熱を遮れば、断熱効果は大きく高まります。走行中には使用できないため、車中泊やアウトドアなど、適切な場所・シーンで使用しましょう。
温めグッズを使う
上級グレードや高級車の中には、シートヒーターやステアリングヒーターが装備されています。これらのヒーター類の熱源は電気のため、暖房のようにエンジンが温まるまで待つ必要がありません。
シートヒーターを使うと、暖房の温度設定を低くしても寒く感じることがなく、暖房の補助として効果的です。シガーソケットから電源を取る後付けのシートヒーターもあるため、試してみましょう。
修理を検討する
「エンジンを稼働してもなかなか温風が出ない」「風が出ていない」「変な臭いがする」などの場合は、暖房に関係する部品を点検してもらいましょう。車の修理店だけではなく、カー用品店やガソリンスタンドで点検してくれる場合もあります。
プロに見てもらうことで故障箇所を特定し、適切に修理するのが得策です。そのまま走行を続けていると、故障箇所とは別の部分が連鎖的に故障する可能性もあるため、速やかに修理に出すことをおすすめします。
買い替えも検討しよう
現行車種に搭載されているエアコンは、多くがオートエアコンです。暖房が効かない場合は、サーモスタットや温度センサーなどさまざまな箇所の故障が考えられます。暖房だけではなく冷房も効かない状態であれば、単体の修理よりも費用は高額です。
10年以上乗っている場合、もしくは車検が近く乗り換えのタイミングでもある場合は、冷房と暖房の修理にお金をかけるよりも買い替えを検討しましょう。
車の暖房を使うときのポイント
車の暖房は、エンジンの熱を使って車内に温風を送ります。そのため、エンジンのエネルギーを使うと「燃費が悪化するのでは」と暖房を我慢してしまう方もいるのではないでしょうか。しかし、車の暖房だけを使う場合は、燃費には影響しません。
ここでは、暖房と燃費の関係性と使うときのポイントを解説します。
暖房を使っても燃費は悪くならない
家庭でエアコンを使うと電気代が高くなるため、同じように「車で暖房を使うと燃費が悪くなる」と考える方もいます。しかし、家庭用エアコンと車の暖房は仕組みが異なるため、暖房をつけても燃費が悪くなることはありません。
車の暖房は、運転すると発生するエンジンの熱を使い、その風を送り込む単純な構造です。エンジンをかけることで車内も温まると考えると、エネルギーを効率良く使えているといえます。燃費を気にして寒さを我慢せず、積極的に暖房を使いましょう。
A/Cボタンがオンの状態だと燃費に影響する
カーエアコンに関連する装置に「A/Cボタン」があります。暖房を使うときにも使う必要があるように感じますが、これはエアーコンプレッサーのスイッチを入れるためのボタンです。
エアーコンプレッサーは冷房をつけるときに稼働させるため、暖房をつけるときに押す必要はありません。必要以上に稼働させると燃費が悪化し、機器の劣化も招くため、A/Cボタンはオフにしておきましょう。
車に負担をかけない暖房のつけ方
エンジンを使う暖房は費用がかからず経済的ですが、使い方によっては車に負担をかけてしまう恐れがあります。暖房を効率的に使うためには、他の空調システムを併用して使うことがポイントです。
暖房をつけるタイミングにも気を配りましょう。ここでは、車に負担をかけず効率的に暖房を使うポイントを紹介します。
エンジンが温まってから暖房のスイッチを入れる
車の暖房は、エンジンの熱がなければ生み出せない仕組みです。そのため、エンジンをかけずに暖房のスイッチを押しても、温風が自然に出てくることはありません。温風が出てくるのはエンジンが熱された後です。
車に乗り込んだ直後から暖房のスイッチを入れられますが、車内が温まるまでにはタイムラグが発生します。ボタンを押してなかなか温風が出なくても慌てずに、しばらくは様子を見てみましょう。寒い日は、乗車する2分~3分前にエンジンをかけておくと快適に過ごせます。
内気循環で外気をシャットアウトする
カーエアコンには、内気循環と外気導入を入れ替えるスイッチが設置されています。内気循環は、車内の温風を後席の方向まで循環させるための装置です。稼働させると熱風が一部に固まることがなくなり、同乗者も快適に過ごしやすくなります。
一方の外気導入は、外の空気を入れるための装置です。これを使うと、暖めた空気と外の冷たい空気が混じり、暖房が効かなくなります。暖房の使用中は外気をシャットアウトして、内気を循環させましょう。
暖房で窓が曇ったらA/Cボタンをオンにする
暖房をつけている際は、基本的にA/Cボタンをオンにする必要はありません。しかし「暖房で窓が曇ったとき」は例外です。このタイミングでエアーコンプレッサーを稼働すれば、除湿効果を発揮して曇りを解消できます。
車の窓ガラスが曇ったままの状態で運転すると、視界の確保が難しく、事故の原因となります。湿度により窓ガラスが曇ったときは、A/Cボタンを押しましょう。
車の暖房を利用するときの注意点
車の暖房は、費用もかからず燃費も消費しない効率的な機構ですが、利用するときには覚えておきたい注意点もあります。リスクを回避するためにも、カーエアコンを調整する方法とエンジンルームの点検方法は覚えておきましょう。
ここでは、車の暖房を利用するときの注意点を2つ紹介します。
一酸化炭素中毒に気を付ける
駐車中にアイドリング状態で長時間暖房をつけていると、ガソリンの燃焼が不十分になることから一酸化炭素を含む排気ガスが発生します。寒いからと窓を閉め切っていると室内に一酸化炭素がたまり、一酸化炭素中毒のリスクが高まるため危険です。
少しの停車では問題ありませんが「長時間停車して居眠りする」「車中泊する」ときは、窓を開けて車内外の空気を循環させましょう。また、停車中・駐車中だけではなく運転中も定期的に窓を開け、空気を循環させることが大切です。
冷却水の量は定期的に確認する
エンジンを冷やす冷却水が減っていると、エンジンが高温になりオーバーヒートを起こします。オーバーヒートを起こすと、最悪の場合エンジンが故障してしまう可能もあるため、冷却水の量は定期的にチェックしましょう。
また、冷却水は循環しており簡単には蒸発しません。そのため、冷却水の量が異常に少ないときは水漏れを疑い、ディーラーや修理工場に相談しましょう。
冷却水の漏れは「駐車中に車の下に色の付いた液だまりができる」「独特の臭いがする」「水温計が通常より高い」ことなどでも確認できます。
まとめ
車の暖房は、エンジンの熱エネルギーを活用した効率的な仕組みです。暖房だけを使うのであれば、燃料を消費しないため気にせず使えます。しかし、暖房が効かないときはエンジン周りの故障が考えられるため、いつまでも温まらない場合は注意しましょう。
暖房が故障している場合は、送風機やサーモスタット、ウォーターポンプなどの交換が必要です。特に冷却水の漏れはオーバーヒートにもつながるため、定期的に冷却水の量をチェックしてリスクを回避しましょう。
■ライタープロフィール
中村浩紀 なかむらひろき
クルマ記事に特化したライター
現在4台の車を所有(アルファード・プリウス・レクサスUX・コペン)。クルマ系のメディアでさまざまなジャンルの記事を執筆し、2024年1月までに300記事以上の実績をもっている。
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