ガソリン車の完全廃止はありえない?現在の状況や今後を想像してみよう
日本のみならず、世界各国でガソリン車やディーゼル車など、地球環境に影響を及ぼす車の廃止に向けた動きが進んでいます。ここまで普及してきたガソリン車が廃止されるのは、ありえないことだと思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ガソリン車の廃止が予定されている理由、廃止後に普及する車を紹介します。最後まで読むことで、ガソリン車の廃止される可能性や現状を理解できるでしょう。
※目次※
・2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略では、車のライフサイクル全体で二酸化炭素排出ゼロを目指している。
・利用時の二酸化炭素排出量もゼロを目指しているため、ガソリン車廃止は不可欠。
・軽自動車のガソリン車廃止も例外ではなく、EV化が進んでいる。
ガソリン車の廃止はありえない?
地球温暖化など環境負荷への取り組みとして、各自動車メーカーは環境に優しい車を開発しています。ガソリン車は走行時に多くの二酸化炭素を排出することから、廃止されるのではと思う方もいるのではないでしょうか。
ここでは、ガソリン車が本当に廃止されるのかを解説します。
日本政府は生産終了を目指している
2021年1月に日本政府は、2035年までに電動車100%の新車販売を目指すことを発表しました。
電動車(EV)とは、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車・燃料電池自動車などです。全て電動車となることから、ガソリン車の新車販売はないと捉えられます。
この決定の背景にあるのは、国際的な地球温暖化対策を目指して採択されたパリ協定です。長期的な努力目標として、国際社会としてカーボンニュートラルの実現を目指すことになりました。
日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、それに伴うグリーン成長戦略を策定しています。目標実現に向けた項目のひとつが、ガソリン車の規制と電動化です。
世界各国の対応も進んでいる
2021年に英国グラスゴーで開かれたCOP26では、パリ協定の目標実現に向けて、2040年までにゼロエミッション車への移行加速を目指す共同声明が発表されました。ゼロエミッション車とは、大気汚染物質・温室効果ガスなどを含む排気ガスがゼロの車両です。
ガソリン車廃止については、英国では2030年、米国カリフォルニア州では2035年までをめどとする方針が発表されています。他にも、フランス・カナダ・中国なども方針を打ち出している状況です。
ありえないとは言い切れないガソリン車の廃止
政府が宣言した2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略とガソリン車の廃止は、どのように関係しているのでしょうか。
ガソリン車廃止は日本国内だけの話ではありません。海外は先に進んでいますが、日本と同じように課題を抱えています。ここでは、ガソリン車廃止時期、廃止までの課題を紹介します。
ガソリン車に乗りづらくなることが考えられる
現時点ではガソリン車を所有する人は多いものの、ハイブリッド車や電気自動車などの選択肢が増えたことを理由に、ガソリンスタンドの店舗数は減少が進んでいます。
総務省消防庁はガソリンスタンドの数だけでなく、ガソリンの販売量も減少傾向にあることから、この先も減少していくのではないかとの見込みを発表しました。
加えて、初年度登録から一定期間経過した車は、自動車税や自動車重量税が重課されています。このようなことから、人によってはガソリン車への乗りづらさを感じるでしょう。
2050年にはガソリン車の完全廃止もありえる
政府が発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2050年に「製造」「利用」「廃棄」など車のライフサイクル全段階で二酸化炭素排出ゼロを目指すとしています。
この目標を果たすには、ガソリン車の完全廃止は不可欠です。安定的かつ安価なカーボンニュートラル電力が必要など課題も残っていることから、2050年までに目標を達成できるかどうかは分かりません。
ガソリン車の廃止には課題が残っている
海外では、日本よりも先にガソリン車の廃止、電動化への動きを見せています。英国は2017年7月、ガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止することを発表しました。
しかし、価格面の課題解決が必要なため、単に廃止するわけにもいきません。現状では、ガソリン車と電動車を比べると100万円以上の価格差があります。
目標である2040年までに技術が進歩する可能性はあるものの、現時点で普及しているガソリン車クラスの価格まで下がるのはハードルが高いといえるでしょう。
ガソリン車廃止に伴い需要増加が期待される車とは?
ガソリン車廃止目標を政府が掲げたことを機に、ガソリン車以外のパワートレインにも注目が集まるようになりました。ガソリン車廃止に伴い、今まで以上に需要増加が期待される車には、ハイブリッド車や電気自動車があります。
それぞれの特徴をチェックしておきましょう。
ハイブリッド
ハイブリッド車とは、ガソリンエンジンと電気など、複数の動力源として動く自動車です。
ガソリン車に比べ排気ガスが少なく、燃費が良い特徴があります。モーターのみの低速走行時には、エンジン音が発生しません。プラグインハイブリッド車とは、外部からバッテリーの充電が可能な車です。
メリットとデメリットについては、下記表を参照してください。長距離を運転する機会が多い方におすすめです。
メリット |
デメリット |
・燃費性能に優れている ・エコカー減税に対応している ・静粛性に優れている |
・車体価格が高い ・駆動用バッテリーの交換費用が高額 ・室内空間が狭い傾向にある |
電気自動車(BEV)
電気自動車(BEV)とは、電気(モーター+バッテリー)を動力源として動く自動車です。ガソリンエンジンは使用しないため、排気ガスは出ません。ガソリン車にある給油口の代わりに、電気を車に送る充電口があります。
主なメリットとデメリットは、下記の通りです。環境性能や静粛性への関心が高い方に向いている車といえます。モーターゆえのスムーズな加速力が魅力です。
メリット |
デメリット |
・環境に優しい ・静粛性が高い ・ランニングコストが安い ・蓄電池として利用できる |
・充電スタンドが少ない ・充電時間が長い ・車体価格が高い |
ガソリン車が廃止されたときに考えられるメリットとは?
ガソリン車が廃止されることだけを考えると、ユーザーには何もメリットがないのではと思う方もいるでしょう。ガソリン車が廃止されて、ハイブリッド車や電気自動車が普及すると、これまでにはない便利な生活が待っています。
ここでは、ガソリン車が廃止されるメリットをチェックしましょう。
災害時の蓄電池を社会実装できる
ハイブリッド車や電気自動車は、ガソリン車にはない大容量のバッテリーを搭載しています。バッテリーに蓄えられた電気は走行用としてだけでなく、外部電源としての利用も可能です。
災害などが起こって家庭に電気が届かない場合、V2H(Vehicle to Home)と呼ばれる機器を使うことで、バッテリーの電気を自宅へと供給できます。
このような非常用電源として使うだけでなく、キャンプ場での電源確保、仕事先で夜間作業現場を照らす照明の電源などさまざまなシーンで活用できるのが魅力です。
高度技術によって利便性が向上する
電気自動車はエンジンを使うことなく、電気の力で走行できるため、ガソリンエンジンの始動音やアイドリング音、エンジンからの振動もありません。
音・振動がない分室内は静粛性が高く、乗員同士の声も聞きやすいことから、友人や家族とのロングドライブもより楽しめるでしょう。
モーターは回転の始まりから大きなトルクを発揮できる特徴を持つため、アクセルペダルを踏んだその瞬間から力強い加速を味わえるのが魅力です。
電気の力で走行する特徴を生かし、自動走行技術の普及も予測されます。交通渋滞の解消、事故件数ゼロなど、達成が難しい目標にも近づけるでしょう。
ガソリン車が廃止されたら軽自動車はどうなる?
軽自動車は普通車よりも車両価格が安い魅力がありますが、電動化に関する装備が追加されると車両価格も上がるでしょう。ガソリン車の廃止には、軽自動車も含まれます。
ここでは、2035年のガソリン車廃止に向けて軽自動車はどのような動きを見せているのかをチェックしましょう。
軽自動車も同じ扱いになる
政府が掲げた目標は軽自動車も例外ではなく、2035年以降はハイブリッド車などの電動車でなければ新車販売されません。
近年、マイルドハイブリッドシステムを搭載した軽自動車が増えています。軽自動車は車体の規格上ボディサイズが普通車よりも小さく、車両価格を抑える必要があることから、駆動用モーターを使うハイブリッドシステムの搭載は難しい状況です。
政府はマイルドハイブリッド車も電動車に含まれるとしており、今後はマイルドハイブリッドシステムを搭載した軽自動車が増えるでしょう。
軽自動車のEV化も進んでいる
電動化の動きは普通車だけではありません。各メーカーが軽自動車を電動化する動きを本格化させています。Nシリーズなどを人気の軽自動車を販売するホンダは、軽バン「N-VAN」のEVモデルを2024年に販売する予定です。
日産と三菱は、互いの知見や強みを引き出し、融合させてこれまでにない車を開発することを目標に共同開発会社「NMKV」を設立しました。共同開発で誕生した軽自動車は、日産では「サクラ」、三菱では「eKクロスEV」という車名で販売しています。
廃止前にガソリン車を選ぶメリットはあるの?
ハイブリッド車や電気自動車のメリットに注目すると、ガソリン車と比べて優れている点が多いような印象を受けるでしょう。しかし、ガソリン車にもメリットがいくつもあり、長らく多くの人々を魅了してきました。ガソリン車を選ぶメリットとデメリットを解説します。
ガソリン車の強み
ガソリン車は、モーターやバッテリーなどのシステムを搭載しないため、基本的にハイブリッド車や電気自動車よりも車体価格が安い点が大きなメリットといえます。4WDを含め豊富な車種がラインアップしており、選択肢が多いことも魅力です。
加えて、静粛性が高いハイブリッドや電気自動車とは異なり、特有のエンジン音や振動を体感できます。エンジン音や振動が好きだと思う人にとっては、重要なポイントとなるでしょう。
ガソリン車の弱み
デメリットとして挙げられるのは、ハイブリッドや電気自動車に比べ燃費性能が劣ることです。長距離ドライブをする機会が多いのであれば、維持費に大きな差が生まれるでしょう。
この他、エコカー減税など税制面のメリットを得にくい特徴もあります。長く同じ車に乗りたいと思っている方に影響がある税制度は、13年経過したガソリン車に対する自動車税や自動車重量税の重課制度です。初年度登録年をチェックしてみましょう。
廃止前に購入したいガソリン車探し【軽自動車】
ガソリン車を選ぶメリットを知って「乗れるうちはガソリン車に乗りたい」と思う方もいるのではないでしょうか。
ここでは、ガソリンモデルをラインアップする軽自動車を3車種紹介します。軽自動車のガソリンモデルであれば、普通車と比べより安く購入が可能です。車選びの参考にしてください。
スズキ アルト
アルトの特徴は、減速時のエネルギーを利用して発電した電気をバッテリーに充電し、電装品へ供給するエネチャージです。ガソリンエンジン・CVTとの組み合わせにより、優れた環境性能とスムーズな走りを両立しています。
スズキの予防安全技術である「SUZUKI Safety Support」を備えている点も魅力です。誤発進抑制機能や衝突被害軽減ブレーキなど、事故を未然に防ぐ技術により、日々の運転をサポートします。以下はアルトの新車価格と、ネクステージが販売する中古車の相場一覧です。
新車価格(税込み) |
106万4,800円~143万2,200円 |
中古車相場(税込み) |
14万9,000円~119万9,000円 |
(2024年5月時点の情報です)
(参考:『アルト(スズキ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
ホンダ N-BOX
国内販売台数No.1を記録しているホンダ N-BOXは、全グレードがガソリン車です。
運転のしやすさを実現するために、高剛性かつ極細フロントピラーを採用し、できるだけ前方の死角を減らして良好な視界を確保しています。軽自動車ながらも、ミニバン並みの高い目線が運転席のこだわりです。
前後シート間隔はミニバンに匹敵するほどのスペースが確保され、大人でも足を組んでくつろげます。以下は、新車価格とネクステージが販売する中古車の相場一覧です。
新車価格(税込み) |
164万8,900円~236万2,800円 |
中古車相場(税込み) |
29万9,000円~189万9,000円 |
(2024年5月時点の情報です)
(参考:『N-BOX(ホンダ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
ダイハツ コペン
2002年にダイハツは、車を操る楽しさを感じられる二人乗りの軽自動車オープンスポーツカー「コペン」を発売開始しました。以来、多くの人にスポーツカーの楽しさを知ってほしいとの思いで進化し続けています。
コペンは、個性の異なるエクステリアデザインが選べるのが魅力の車です。スタイルの違いはありますが、エンジンは低回転域のトルク特性が向上した直列3気筒インタークーラーターボ付きエンジンに統一されています。
以下は新車価格とネクステージが販売する中古車の相場一覧です。
新車価格(税込み) |
188万8,700円~238万2,200円 |
中古車相場(税込み) |
59万9,000円~272万9,000円 |
(2024年5月時点の情報です)
(参考:『コペン(ダイハツ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
廃止前に購入したいガソリン車探し【普通車】
軽自動車は乗車定員が4人であることから、ファミリーユーザーやアウトドアユーザーなどは普通車のほうが良いと思うのではないでしょうか。普通車も電動化が進んでいるものの、ガソリンモデルしかラインアップしていない車もあります。
ここでは、普通車に絞ってガソリン車をチェックしましょう。
トヨタ ヤリス
トヨタ ヤリスは、4WDをはじめ、ガソリン車の豊富なラインアップを用意しています。1.5Lのダイナミックフォースエンジンは、車の基本性能を高めるTNGA思想に基づいて開発されました。
荷室にはアジャスタブルデッキボードが設けられ、収納スペースを有効活用できる工夫が施されています。以下は、ヤリスの新車価格とネクステージが販売する中古車相場一覧です。
新車価格(税込み) |
150万1,000円~235万2,000円 |
中古車相場(税込み) |
99万9,000円~264万9,000円 |
(2024年5月時点の情報です)
(参考:『ヤリス(トヨタ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
レクサス NX
NXは、排気量2.4L 直列4気筒エンジンを搭載し、高い静粛性と低燃費性能を実現しながらも高トルクでダイナミックな走りが味わえるSUVです。
荷室容量は最大1,411L確保できる上、LEDランプも備えることで、利便性を向上させている魅力があります。以下はNXの新車価格とネクステージが販売する中古車相場一覧です。
新車価格(税込み) |
485万円~650万6,000円 |
中古車相場(税込み) |
219万9,000円~729万9,000円 |
(2024年5月時点の情報です)
(参考:『NX(レクサス)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
マツダ ロードスター
マツダが目指す「人馬一体」のドライブフィーリングを味わえる車でありながら、先進安全技術の標準装備やシートヒーターの採用など高い実用性も兼ね備えた車です。
ルーフを手動開閉するタイプ、スイッチ操作だけでオープンカースタイルにできるモデル「RF」が展開されています。以下は、新車価格とネクステージの中古車相場一覧です。
新車価格(税込み) |
289万8,500円~430万8,700円 |
中古車相場(税込み) |
149万9,000円~369万9,000円 |
(2024年5月時点の情報です)
(参考:『ロードスター(マツダ)の中古車一覧|新車・中古車の【ネクステージ】』)
まとめ
政府は、2035年までを目安に、新車販売の全てをハイブリッド車・電気自動車などの電動車にすると発表しています。その後も、ガソリン車は中古車であれば購入が可能です。
しかし「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」により、2050年にはガソリン車の利用を含む廃止を目標に掲げています。
ガソリン車は電動車にはない、独特の振動やエンジン音を楽しめるのが魅力です。車両価格も安いことから、好みの方は廃止される前にさまざまなガソリン車でドライブを楽しみましょう。
▼ライタープロフィール
畠山達也
自動車Webライター
自動車免許のほか、一級自動車整備士、フォークリフト運転免許などを保有するライター。自動車メーカーや部品業界に携わった際の知識や経験を活かし、Webメディアを通して「車の楽しさ」を発信している。
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