個人事業主が行う中古車の減価償却とは?お得なケースや仕訳方法
個人事業主として仕事をする場合、自動車が必要なケースもあります。使用用途が業務用であれば経費として計上できますが、プライベートでも使用しているのであれば、家事按分が必要です。
また、車は固定資産になるため、減価償却や経費の仕訳方法を理解しておく必要があります。本稿では、個人事業主で車の使用を考えている人に向けて、新車と中古車、カーリースで最も節税効果が高い方法、それに加えどのような項目が経費として認められるのかについて解説します。
※目次※
5. 個人事業主が自動車関連で経費にできるものとできないもの
・個人事業主が車を購入する場合、プライベートと併用しているのであれば家事按分する必要がある
・中古車のほうが新車よりも減価償却の期間が短いだけに、節税効果が高い
・カーリースは購入した車を自由に売却できないが、新車より高い節税効果がある
個人事業主が購入した自動車は経費にできるの?
個人事業主で自動車の購入を検討している方もいるでしょう。個人事業主が仕事で使う車を購入したら、どこまで経費として認められるのかが気になるところです。
経費として計上できるかどうかは、購入する車がどれくらい事業にかかわるかによって判断できます。ここでは、個人事業主が車を購入したら経費として計上できるかどうかについて解説します。
使用目的によっては経費になる
個人事業主が自動車を購入する場合でも、全て事業で使うのであれば経費にできます。経費として認められるポイントは、その車をどれぐらい事業に使っているかです。
例えば配送業を営んでおり、仕事用の車を購入した場合では原則として経費計上が可能となります。ただし、同じ車をプライベートでも使うのであれば、事業とはまったく関係ないため経費として計上できません。購入する車の用途が事業と関連性があるものによって、経費として認められるかの判断基準になってきます。
ローンでの購入は利息が経費になる
車を購入したときは、車の使用目的により経費として計上できるかどうかが決まりますが、車をローンで購入したときはローン利息についても経費として計上できます。
ただし車の購入と同様に、「購入する車と事業の関連性」が問われるため、事業用のみで使用するのであれば全て経費として計上できますが、プライベート用としても使用する場合は家事按分が必要です。家事按分については次の項目で解説します。
全てが経費にできるとは限らない
個人事業主で仕事用の車を購入したとしても、全てが経費にできるとは限りません。車を仕事用とプライベート用で使っているケースは別途計算が必要です。
業務とプライベートで同じ車を使っている場合は、事業用として使った割合に応じて経費として計上する必要があり、家事按分といいます。
家事按分する場合、使用日数や使用頻度を根拠に経費計上分を計算します。例えば平日の5日は仕事用、休日の2日はプライベート用として使用している場合、経費として認められるのは5/7です。
個人事業主の中古車購入費用は減価償却の対象になる
車の購入時にかかった費用は、一括で経費に計上はできません。所得税法の定めによって、車を購入したときにかかった費用は、減価償却で計算します。減価償却は、計算するときに迷いがちなポイントですが、減価償却とは何かというところから、しっかりチェックしておきましょう。
減価償却とは
減価償却とは、長期にわたって使用する資産を取得した場合にかかった費用を、毎年一定ずつ経費に算入する計算方法のことです。長期にわたり使用する資産のことを「固定資産」と呼び、車の場合も新車・中古車に関係なく固定資産に含まれます。
新車を購入した場合は車両本体価格と諸費用を合計した金額を取得価額として、中古車を購入した場合は車両運搬具と明細書に記載された金額を取得価額として計算が必要です。このように、新車の場合と中古車の場合で取得価額の考え方が異なります。
また、自動車税や各種保険料などは取得価額には含まれません。間違えて取得価額として計算してしまうことのないように気を付けましょう。
中古車の場合の耐用年数
中古車を購入した場合の耐用年数は計算して求める必要があり、具体的な計算式は以下の通りです。
(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2) |
計算結果に端数が出た場合は切り捨てますが、計算の結果が2年未満になった場合は、例外として切り上げて2年とします。例えば中古車の3年落ちの普通自動車を購入したときの計算式は以下の通りです。
(6年-3年)+(3年×0.2)=3.6 |
3.6ですので切り捨てて耐用年数は3年と算出できます。単純に経過年数を引くだけではないので、計算ミスをしないようにしましょう。すでに法定耐用年数を経過した中古車を購入した場合は、「法定耐用年数×0.2」で耐用年数を計算します。普通自動車の耐用年数を計算すると数字は1.2です。
2年未満は切り上げるため耐用年数は2年です。このように、どの程度の金額を毎年経費に計上できるのかは耐用年数が重要になってくるわけです。
新車の場合の耐用年数
新車の場合の耐用年数は、普通自動車と軽自動車で異なります。具体的な耐用年数は下記の通りです。
普通自動車 |
6年 |
軽自動車 |
4年 |
一般的に個人事業主の場合は、車を購入する際にかかった費用を法定耐用年数で割り毎年経費に計上します。貨物自動車の場合は車種によって4年~5年、3輪自動車は3年が法定耐用年数です。特殊な車を購入する場合は、合わせて覚えておくとよいでしょう。
(参考:『【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(車両・運搬具/工具)』)
減価償却の計算方法
個人事業主が車を購入したときにかかった費用を経費に計上する場合、一般的に「定額法」を用います。定額法とは、毎年同じ割合で減価償却費を計算する方法です。別途、税務署に「定率法」の適用を申請している場合は定率法で計算しましょう。今回は定額法を用いた計算方法を解説します。
例えば3年落ちで車両本体価格が200万円の普通自動車を購入した場合で考えてみましょう。この自動車の耐用年数を前述の方法で計算すると3年です。3年かけて200万円を減価償却するため、1年あたり約67万円を経費として計上できます。
次に、10年落ちで車両本体価格が100万円の普通自動車の場合では、法定耐用年数を経過しているため、耐用年数の計算は2年です。減価償却額は100万円を2で割った50万円を1年あたりの経費として計上できます。
定額法で減価償却の計算をするときは、対象となる車両価格を耐用年数で均等割します。比較的簡単に計算できるので覚えやすいでしょう。
(参考:『【確定申告書等作成コーナー】-定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)』)
個人事業主は中古の自動車購入がお得なケースがある
個人事業主が自動車を購入すると、使用目的によっては経費に計上できるのは説明した通りです。また自動車の購入費用や購入にかかわる費用は減価償却の対象になるため、節税対策につながります。
ここまで読んだ人の中には、「新車と中古車はどちらを買うべき?」と悩んでいる方も多いでしょう。ここでは、新車や中古車の節税効果と、さらにはカーリースについても解説します。
新車より中古車のほうが節税になる場合がある
新車を購入した場合では、普通自動車で6年、軽自動車で4年の期間をかけて減価償却します。中古車では、例えば4年落ちの普通自動車を購入したときの耐用年数は2年です。
さらに古い中古車で耐用年数が2年未満になった場合でも、減価償却期間は2年として計算します。つまり4年落ち以上の古い車の減価償却期間は2年になるわけです。以下は新車6年、中古車2年で減価償却した計算例です。
|
新車(150万円) |
中古車(150万円) |
減価償却期間 |
6年 |
2年 |
1年当たりの償却費 |
25万円 |
75万円 |
減価償却期間が短い中古車では、新車に比べて1年当たりの節税効果を得られます。そのため利益が増えた年に節税対策をするのであれば、4年落ちの中古車がおすすめというわけです。ただし極端に安価な中古車は、十分に効果を得られない可能性があります。減価償却期間を考慮した上で、シミュレーションしてみましょう。
カーリースはメリットとデメリットがある
カーリースは、頭金0円で月々定額の料金を払うことで、好きな新車に乗ることができるサービスです。カーリースのメリットは、事業用として使用しているのであれば、全額経費にできることです。ただし、プライベートでも使っている場合は、上述した家事按分の計算が必要です。
カーリースのデメリットは、車の所有権がないため売却ができないことや、走行距離に制限があったり、会社によっては途中解約ができなかったりといったことがあります。
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個人事業主が自動車を購入した際の仕訳
自動車の購入で経費として計上できるものは、支払い手数料や保険料などさまざまです。自動車本体の購入コストだけでなく、預け金などの計上も可能なため、仕訳表を使ってひとつずつ詳解説します。
費用明細と勘定科目の仕訳表
自動車の購入にかかった費用を仕訳するには、勘定科目を把握することが重要です。課税対象の有無も金額に影響するため、以下の一覧表を参考に内容をチェックしておきましょう。
勘定科目 |
費用の詳細 |
課税・非課税 |
車両運搬具 |
・車両本体価格 ・納車にかかる費用 ・カーナビやドライブレコーダーなどのオプション費用 |
課税 |
保険料 |
・自賠責保険料 ・任意保険料(加入する場合) |
非課税 |
支払い手数料 |
・検査登録や車庫証明の手続き代行費用 ・資金管理料金 |
課税 |
・検査登録法定費用 ・車庫証明法定費用 |
非課税 |
|
租税公課 |
・自動車重量税 ・環境性能割 |
不課税 |
預け金 |
・リサイクル預託金 |
不課税 |
勘定科目の中でも大部分を占めるのは、車両本体価格を含む「車両運搬具」です。基本の車両価格に上乗せされたオプション代もこの一部に含まれます。リサイクル預託金は「預け金」に該当し不課税なため、納車費用などと合算しないように注意しましょう。
また、保険料や税金は購入後も定期的に発生します。販売店に支払う手数料も経費として計上できるため、金額を明確にして反映させましょう。
勘定科目1. 車両運搬具とは
自動車本体価格だけでなく、タイヤやカーナビなどのオプション、引取運賃などを計上する項目が「車両運搬具」です。具体的には以下のような費用が含まれます。
・車両本体の購入金額
・タイヤやカーナビなどのオプション費用
・引取運賃
・購入時の手数料
・納車に費やした金額
・運送時の保険料
・関税
個人事業主が事業用に自動車を購入した場合は、耐用年数を考慮して反映するのが原則です。車両本体価格だけでなく、納車費用や購入手数料なども減価償却費に含みます。支払いの用途を明確にして仕訳をすると判断しやすくなるでしょう。
勘定科目2. 保険料とは
「保険料」とは、自動車を所有するのに発生する保険料金のことです。自動車においては以下の2種類があるため、加入状況に応じて適切な金額を算出しましょう。
自賠責保険料 |
自動車を購入した際に義務付けられている自動車保険 |
任意保険料 |
ユーザーの希望で加入可否やプランを決められる自動車保険 |
自賠責保険の更新時期は場合によって異なりますが、最長でも3年で保険料も多くないため2年以上の契約期間でも一度に計上できます。任意保険では例外として5年以上の期間で契約する場合は、「長期前払費用」の項目に含めたほうが良いでしょう。
勘定科目3. 支払い手数料とは
自動車に乗るためには、検査登録や車庫証明の手続きを済ませる必要があります。これらは法定費用とも呼ばれますが、「支払い手数料」の項目で計上しましょう。
・検査登録手続きの代行費用
・車庫証明手続きの代行費用
・検査登録法定費用
・車庫証明法定費用
・資金管理料金
各種手続きをディーラーや販売店などの業者に代行を依頼した場合は手数料が発生します。こうした代行手数料もコストの一部として扱われるため、同じ勘定科目への仕訳が可能です。費用の詳細によって課税・非課税が異なる点に注意しましょう。
勘定科目4. 租税公課とは
自動車を購入するときは、「自動車重量税」「環境性能割」などの税金がかかります。自動車重量税は車検毎に2年または3年分を支払うのが一般的ですが、金額が大きくないため一度に計上しても問題ありません。環境性能割は購入時のみ支払います。
自動車重量税 |
車両重量に応じて課税される |
環境性能割 |
燃費性能など自動車の購入金額に対して課税される |
さらに、自動車購入後は毎年「自動車税(軽自動車の場合は軽自動車税)」が課税されます。購入時期に関係なく毎年5月に納税通知書が届くため、納税後には「租税公課」として処理しましょう。
勘定科目5. 預け金とは
自動車を購入するときには、本体やオプションとは別に「リサイクル預託金」を支払います。これは対象の自動車が解体処分される際、解体作業に必要なコストをユーザーが負担する仕組みになっているものです。
廃車になるまでは「預け金」の勘定科目で計上し、実際に廃車になった段階で、購入時に計上した預け金を費用に切り替えます。個人事業主でも事業用自動車の台数が多い場合は、リサイクル預託金の項目を作ると仕訳に反映しやすくなるでしょう。
中古車の売却で廃車にならなかった場合は、リサイクル預託金は戻ってくるため金銭債権の譲渡として扱います。
個人事業主が自動車関連で経費にできるものとできないもの
確定申告で車にかかった費用を経費として計上するときに、経費として認められるものと、経費として認められないものがあることをしっかり覚えておくことが大事です。
また、新車や中古車に限らず購入した車両本体価格は減価償却として、耐用年数にあった年数に分けて経費として計上します。ここでは経費にできるものとできないものを簡単に確認してみましょう。
経費にできる自動車関連のもの
事業用として車を購入、使用する場合に経費に計上できる主なものは以下の通りです。いずれの費用も事業用として使った分に限って経費となり、プライペートで使ったものは経費になりません。
そのため事業用に使った割合とプライベートで使った割合に応じて家事按分し、事業用に使った分のみを経費として計上します。
・車両本体価格
・自動車税、自動車重量税、環境性能割などの税金
・自賠責保険料、任意保険料
・納車費用、検査登録や車庫証明の手続き代行費用
・ガソリン代、洗車費用、点検整備費用、消耗品費など
・駐車場代、コインパーキング、高速道路代
・タイヤ代、パンク修理代、カーナビ、ドライブレコーダー
経費にできない自動車関連のもの
先述しましたが、リサイクル預託金は経費としては計上できません。リサイクル預託金は、新車、中古車に関係なく車を購入したときに所有者が支払うものですが、車を売却したときには返金されるため購入時や使用しているときには計上できないわけです。
リサイクル預託金は、廃車にするときのリサイクルにかかる料金として使われるもので、廃車にするときには経費として計上します。リサイクル預託金の勘定科目は、長期前払費用、リサクル預託金、支払い手数料です。
中古の自家用車は個人事業主の業務用に転用できる?
原則的に10万円以上の車は全額経費にできず減価償却しますが、青色申告している中小企業では特例として、固定資産である車が30万円未満の場合は一度に経費として計上できます。
では、新車や中古車で購入してプライベート(非業務用)で使っていた車を、配達やライドシェアなど個人事業主として業務用に使いたいという場合の減価償却はどうすればいいのかを確認してみましょう。
未償却残高相当額として経費計上が可能
プラベートで使っていたけれど業務用として使う場合でも減価償却できます。その場合は、未償却残高相当額の算出が必要です。
未償却残高相当額とは、車の取得価額から業務で使用していない期間における減価額を引いたものとなっています。そのため、未償却残高相当額を求めるには、プライベートで使っていた部分と業務用で使う部分の算出方法がポイントになるわけです。すでにプライベートで使用していたため、中古車の耐用年数の償却率で算出します。
中古車の未償却残高相当額を計算する方法
中古車を購入して、プライベートで使用後に業務用として使う場合はどういう計算になるのでしょうか。普通自動車の耐用年数は新車でしたら6年ですが、中古車の場合は耐用年数に応じて算出します。例えば3年落ちの中古を購入したときの耐用年数は3年です。
また、耐用年数は業務用が前提となるため、非業務用では業務用の耐用年数に1.5倍して1年未満の端数は切り捨てます。未償却残高相当額を求める前に、非業務で使用した減価額を求めるのですが、計算式は以下の通りです。
非業務で使用した減価額=取得価額(中古車)×0.9×1.5×償却率(旧定額法) |
未償却残高相当額=取得価額(中古車)-非業務で使用した減価額 |
(参考:『No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁』)
まとめ
個人事業主であっても、事業に使うのであれば車の購入費用だけでなく、所有中のさまざまなコストを経費に計上できます。また、中古車やプライベートで使っている車を途中から事業用として使う場合にも、減価償却が可能です。
減価償却や経費を計上すれば節税効果にもつながるため、細かい勘定科目や規定についても理解を深めておきたい要素といえます。さらに節税したいのであれば、減価償却の年数は短くなるものの4年落ちの中古車を選ぶと良いでしょう。
▼ライタープロフィール
鈴木博之
エディター/ライター
出版社でさまざまなジャンルの雑誌編集を経験したのちフリーランスとして活動。現在は自動車だけでなく、EVバイク、電動アシスト自転車など、面白い乗り物を見つけては取材しているフリーランス編集ライター。
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